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東京地方裁判所 昭和28年(ワ)1509号 判決

原告 杉田良之助

被告 東豊交易株式会社

一、主  文

1  被告会社の昭和二十八年一月二十三日の臨時株主総会における

「一、取締役石田宗司、同奥田秀次郎、同吉岡信之、同梅北末初、同杉田良之助及び同木下一夫を解任する。

二、石田宗司、石田衛、有富光門及び田中元を取締役に選任する。

三、近田久を監査役に選任する。

四、定款第三条中「新宿区」とあるのを「中央区」に変更する。」

との決議が存在しないことを確認する。

2  被告会社の昭和二十八年一月二十三日の取締役会における

「一、取締役石田宗司を代表取締役に選任する。

二、本店を東京都新宿区四谷三丁目二番地二から同都中央区日本橋本町四丁目一番地に移転する。」

との決議が無効であることを確認する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

一、請求の趣旨

主文第一ないし第三項同旨の判決を求める。

二、請求の原因

(1)  被告会社は、資本の額百万円、発行済株式総数二万株、一株の金額五十万円の株式会社である。原告は、被告会社の二千株の株主であり、且つ設立以来引き続き取締役(特に昭和二十七年十二月二十二日以降代表取締役)である。

(イ)  被告会社は昭和二十八年一月二十三日午前十時、東京都中央区日本橋本町四丁目一番地株式会社三近商会事務所において、臨時株主総会を開催し、主文第一項記載の各決議がなされたとして、同年二月五日その旨の登記を了した。

(ロ)  また、被告会社は、同日午前十一時、同所において、取締役会を開催し、主文第二項記載の決議がなされたとして同年二月五日その旨の登記を了した。

(2)  しかしながら、右株主総会の決議は、次の(イ)(ロ)(ハ)の理由によつて、存在しないものであり、右取締役会の決議は、次の(二)の理由によつて無効のものである。

議は、次の(二)の理由によつて無効のものである。

(イ)  本件株主総会は石田宗司等が共謀の上虚構の株主総会議事録を作成し、適式に株主総会が開催されたもののごとく装つて登記をしたものにすぎず、実は全く架空のものである。

(ロ)  仮にそうでないとしても、当時唯一人の代表取締役たる原告において、本件株主総会を招集したことがないから、招集権限なき他の何人かの招集に係るものであつて、株主総会として法律上不存在である。

(ハ)  被告会社株主である神谷正太郎(六千株)、奥田秀次郎(二千株)、吉岡信之(二千株)、石本正彦(二千株)、梅北末初(二千株)及び原告(二千株)の六名は、本件株主総会の招集通知を受けず、従つてこれに出席して議決権を行使していない。而して右六名の持株数合計は被告会社の発行済株式総数二万株中一万六千株に達し、右以外の株主は石田宗司及び茂又肇(いづれも二千株)の二名にすぎないから、かかる少数の株主が株主総会と称して集合していたことがあつたとしても、これは被告会社の株主総会とあるとはいいえないものである。

(ニ)  又右取締役会には、石田宗司、石田衛、有富光門及び田中元が出席したとされているが、石田宗司を除く他の三名は前記株主総会において取締役に選任されたとされているものであるけれども、前述の通り、その選任決議が法律上不存在である以上、実は取締役ではなかつたものである。これに反し、正当の取締役である奥田秀次郎、吉岡信之、梅北末初、木下一夫及び原告の五名に対しては、右取締役会の招集の通知がなく、従つて同人等はこれに出席していない。すなわち、本件取締役会は、不成立であるか、又は招集の手続及び決議の方法に瑕疵があるから、法律上無効であるといわなければならない。

(3)  よつて、本件株主総会決議の不存在及び取締役会決議の無効確認を求める。

三、被告の答弁及び主張。

(1)  「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求める。

(2)  原告主張の事実中、二の(1) の事実及び原告が昭和二十七年十二月二十六日被告会社の代表取締役として登記されたことは認めるけれども、その余の事実はすべて否認する。

(3)  本件総会は、現実に開催されたものであつて、その招集は、つぎの通り適法になされたものである。

(イ)  石田宗司は、被告会社設立と同時に取締役兼代表取締役に選任せられ、引続き在任中昭和二十七年十二月十八日、その資格において、本件総会の招集通知を発した上現実に開催されたものであるから、本件総会は、原告主張のような無権限者の招集に係るものではない。

(ロ)  被告会社は、昭和二十四年十二月一日、当時の株主たる神谷正太郎(四千株)、奥田秀次郎(二千株)、梅北末初(二千株)、茂又肇(二千株)、石本正彦(二千株)、吉岡信之(二千株)、島田光衛(二千株)、原告(二千株)等に対し、株券を発行したが石田宗司は、その頃、右神谷外七名からその株式全部の譲渡を受け白紙委任状及び株式譲渡承認書とともに株券の引渡を受けたから、同人は、自己の引受取得に係る二千株とあわせ被告会社の全株式二万株を取得するにいたつた。

しかるに、昭和二十七年八月中、石田宗司は、更に、矢野智弘、石田衛、豊島中、石田宗兵衛、有富光門、田中三男、近田久、田中元に被告会社株式二千株宛を譲渡し、同月中右矢野智弘ら八名及び石田宗司の為に各二千株につき名義書換がなされた。

本件総会の招集通知は、右名義書換のなされた株主名簿上株主に対し発せられ、これに対し、石田宗兵衛石田衛、田中三男の三名が委任状により、その他の六名が現実に出席し、決議したものであるから、何らの違法がない。

(ハ)  仮に以上の主張が認められず、原告主張の株主六名に対し招集通知をなさず、同人等の出席がなかつたとしても、爾余の株主の出席により本件株主総会は形式上は成立したものといえるから、これを法律上不存在であるとはいえない。

(ニ)  本件取締役会決議は無効ではない。すなわち、右に述べたように、本件株主総会の決議は何ら瑕疵がなく適法有効であるから、右総会において選任せられた取締役石田宗司、石田衛、有富光門、田中元の資格にも何ら疑問はない。従つて同人等が出席してなした本件取締役会決議には何らの無効原因も存しない。

四、原告の反駁。

被告会社が昭和二十四年十二月一日株券を発行したことは否認する。被告は、設立以来現在まで株券を発行したことがなかつたから、白紙委任状附株券の交付による株式の譲渡もあり得い。被告会社の設立に際し、引受によつて株式を取得した者は、原告、石田宗司、奥田秀次郎、梅北末初、吉岡信之、茂又肇、石本正彦(以上各二千株)及び神谷正太郎(六千株)の八名であつて、そのうち、原告神谷、奥田、梅北、吉岡、石本の六名はその株式を他に譲渡したことなく、仮に、右六名以外の株主がその株式を他に譲渡したとしても、被告会社が株券を発行していない以上、その譲渡は会社に対し効力を生じない。

五、立証。<省略>

三、理  由

一、原告主張の請求原因事実中二の(1) は全部当事者間に争がない。

二、証人石田宗司の証言により真正に成立したものと認める乙第一、二、三号証及び成立に争のない甲第六号証の記載に同証人及び証人堀地善次郎の証言を併せて考察すれば、被告会社においては、訴外石田宗司が昭和二十七年十二月十八日代表取締役の資格において招集通知を発して招集した株主総会を昭和二十八年一月二十三日午前十時東京都中央区本町四丁目一番地株式会社三近商会内に開催したことを認めることができ、他にこれに反する証拠は存在しないから、本件総会は招集及び開催のないものと断定することができないものであると同時に招集時において招集の権限のない者によつて招集されたものということができない。前掲甲第六号証によれば、原告が本件総会開催時において被告会社の代表取締役たることを認めうるけれども、昭和二十七年十二月十八日の招集時においては訴外石田宗司が代表取締役であつたこと前認定の通りであつて、原告が代表取締であつたことを認めることのできる何らの証拠もない。請求原因(2) の(イ)、(ロ)の主張は理由がない。

次に成立に争ない甲第一号証及び同第十四号証の一によれば、被告会社の設立に際し、奥田秀次郎、梅北末初、石田宗司、茂又肇、吉岡信之、石本正彦及び原告の七名が発起人となり、各二千株を引き受け、訴外神谷正太郎が申込をした上六千株を引き受けたことがみとめられるから、右の者等はいずれも被告会社の設立により右数量の株式を取得し、被告会社の株主となつたものということができる。原告は、右株主のうち本件総会の招集をうけ、これに出席したものは、訴外石田宗司及び同茂又肇の二人にすぎないと主張するから、考察するに、被告会社は、(一)昭和二十七年八月十八日、石田衛から奥田秀次郎の株式二千株につき、石田宗兵衛から茂又肇の株式二千株につき、田中三男から吉岡信之の株式二千株につき、近田久から石本正彦の株式二千株につき、石田宗司から神谷正太郎の株式二千株につき、田中元から島田光衛の株式二千株につき、(二)同月二十日、豊島中から梅北末初の株式二千株につき、矢野智弘から神谷正太郎の株式二千株につき、(三)同月二十二日、有富光門から原告の株式二千株につき、いづれも、株式の譲渡があつたとして、白紙委任状、株式譲渡承諾書及び株券を呈示し、適式の名義書換の請求があり、被告会社においては、直にその手続を完了したものであると主張し、証人石田宗司、同茂又肇の各証言により真正に成立したものと認める乙第五号証、同第六号証の一ないし二百によれば、被告会社の株主名簿及び株券には被告の右主張に副う記載のあることが認められるけれども、右石田証人、茂又証人及び堀池善次郎(後記措信しない部分を除く。)の各証言によれば、被告会社の株券(百株券二百枚)は、昭和二十五年二月ないし三月頃調製せられたものであるが、代表取締役石田宗司は、被告会社設立の際の株式払込金はすべて自己の出損にかかるもので他の株主はすべていわゆる名義株主にすぎないから、被告会社株式は実質上全部自己に帰属すると考え(その果して然るに否かの判断は本件においては必要がないから、しばらく措く。)、株券発行に際し、他の株主に対し株券を交付することなく、自己の手許に一括保管していたが、たまたま、昭和二十六年中発生した被告会社の事業上の蹉跌の収拾に起因し、石田宗司と従来その授助者であつた神谷正太郎との間にあつれきを生じ、同二十七年夏頃、遂に決裂の危機に臨むや、石田は被告会社における自己の地位の確保に不安を感ずるにいたり、神谷及び原告杉田良之助ら一派の株主を被告会社から追放しようと企て、前記のように保管中であつた株券を庶務係堀池善次郎に交付し、同人に命じて株主名簿及び株券上に被告主張のような名義書換をなさしめたことを認めることができる。証人堀池善次郎の証言中右認定に反し、右株券には白紙委任状及び株式譲渡承諾書が添附されていた旨の部分は真実とうけることができず他にこれを左右するに足る証拠はない。

かくの如く、譲渡証書を添附した株券又は裏書ある株券の呈示がないにもかかわらず、被告会社代表者の一存で、株主名簿上の株主の名義を抹消し、第三者に対し名義書換の形式を践んだとしても、その名義書換は、右に対する除権判決の呈示の如き特別の事情のない限り、無効というべく、したがつて、その株主名簿の記載には法律上何らの効力がなく、その名義を抹消せられた株主は、株主名簿の記載にかかわらず、依然会社に対して株主たることを対抗しうるものといわなければならない。(ことに乙第五号証、同第六号証の百八十一ないし二百によれば、神谷正太郎は、前認定の通り、六千株を引受取得したもであるにもかかわらず、被告会社においては、これを四千株とし、別に島田光衛が二千株の株主たるものとして株券を調製し、株主名簿の記載をしているが、かかることあるも神谷の株主たる地位に何らの消長を及ぼさないことは明白である。)従つて、被告会社に対する関係では、株主及びその持株数は設立当初と何ら変動がないと認めざるを得ない。

さて、成立に争のない乙三号証、前記証人石田宗司及び堀池善次郎の各証言を綜合すれば、本件総会の招集通知は右名義書換後の株主名簿上の株主九名に対し発せられ、総会には、石田宗司、矢野智弘、豊島中、有富光門、近田久、田中元が出席し(石田宗兵衛、石田衛、田中三男は委任状により出席)たことが認められる。

しかしながら、前認定の如く、右九名中石田宗司を除く八名は会社に対する関係において株主であるといえないから、発行済株式総数二万株のうち一万八千株につき正当株主に招集なく僅二千株の株主であるにすぎない石田宗司一名に対してのみ招集手続がとられたにすぎないものというべく、かかる招集手続によつて開催された本件総会は、株式数からいつても、株主数からいつても、とうていこれを法律上有効なものと認めることができない。したがつて本件総会においてなされたとする決議はすべて法律上不存在であるといわなければならない。請求原因のうち(2) の(ハ)は理由があるというべきである。

三、果してしからば、成立に争のない乙第四号証によつて認められる被告会社の昭和二十八年一月二十三日の取締役会は、石田宗司以外の取締役奥田秀次郎、吉岡信之、梅北末初、木下一夫及び原告に対する招集手続を欠き、そこでなされた主文第二項記載の決議は取締役でない石田衛、有富光門及び田中元が加つてしたことになり、招集手続及び決議の方法にかしありというべく、本件取締役会決議は、当然無効であるといわなければならない。

四、原告が被告会社の二千株の株主であること前認定の通りであるから、原告は、本訴につき確認の利益を有するものである。

五、よつて原告の本訴請求をすべて正当として認容し、訴訟費用の負担つき民事訴訟法第八十九条の規定を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 小川善吉 太田夏生 宮本聖司)

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